より安全で確実な手術を可能にする目的で、患者個々のデータを用いて臓器変形、切削プログラム、力覚を追加した、これまでにない全く新しい、次世代型3D-CGバーチャル手術シミュレーションシステム、21世紀の動く新手術テキストを開発します。
多くの癌の第1選択の治療法は手術です。わが国は高難易度な手術手技を必要とする癌が多いにもかかわらず、安全に手術が可能な国とされていますが、手術死亡率は数%ありゼロに近づける為の工夫が求められています。また、癌の切除治療における5年生存率の地域格差は10%以上にも及び“がん難民”が問題となっています。さらに現在外科医は減少を続けており、外科が敬遠される理由として15年という長期のOJT期間が必要なこと挙げられます。
本プロジェクトは、視覚だけでなく触覚も含めた最高度の3D技術を開発し、多様な分野への応用を目指すものです。例えば青少年の人体・健康についての理解増進などへの利用など、幅広い展開が期待される社会的意義の大きなプロジェクトと言えます。
この取り組みの効果としては以下のものが挙げられます。
- 画像解剖を重視する外科手術とIT技術の有機的結合と相乗効果は医療界では最もインパクトがあります。特に医学生のみならず、臨床に携わる医師の教育法として効果は多大であるとされています。
- 次世代型3D-CGバーチャル手術シミュレーションシステムのデータを地域や国で集積、共有できる環境を構築することで手術手技の評価、集合知的解析が可能となります。
- 日本の外科治療のレベルの底上げが図れるため、日本の癌医療水準均霑化の推進に貢献します。
- 次世代型3D-CGバーチャル手術シミュレーションシステム、21世紀の動く新手術テキストが医学生、外科医にとって魅力的で効果的な教材となり、新たな手術の考案、創作に寄与し、外科医減少防止につながることが期待されます。
- バーチャルで臓器を移動、変形させ、力覚を感じながら、臓器付近の血管の出現を時系列に視認可能とするシステムを開発します。現システムと比較しリアリティが向上し精密な術前計画を実現します。昨年度肝臓における上記システムの基礎を既に開発し臨床において有効な治療ツールになっています。肝臓手術をベースにして膵臓、肺、食道、胃、大腸とコンテンツを拡張します。
- 評価として他施設共同で前向きコホート観察研究し、その臨床的有効性を検討します。
- 共同研究体制を敷いているシステム情報工学科の研究者と、空間に対象臓器を立体浮遊表示させ、複数の術者で同時にバーチャル切除シミュレーションを行うことを可能とします。
- 次世代型3D-CGバーチャル手術シミュレーションシステムの症例データをデータベース化し、集合知共有化システムを構築化、クラウド化を行い、日本全国各地からのアクセスを可能とします。
- データベースを編集することで、21世紀の動く新手術テキストとして魅力的な教材に仕上げます(次世代型3D-CGハイパーメディア)。紙ベースの旧外科教育プログラムから脱却し、次世代型3D-CGハイパーメディアを医学生教育に取り入れ、医学生、研修医における使用効果の検討、判定を行います。